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税制改正~「年収の壁」はどうなった?~

「103万円の壁」における基礎控除改正の概要図
出所:自民党HP〜「103万円の壁」 Q&A〜

 政府・与党は、所得税の基礎控除について、当初の案を修正した案を衆議院に提出し、3月4日の衆議院本会議で可決、参議院に送付しました。

 

 昨年12月20日に政府・与党が決定した2025年度税制改正大綱では、所得税の非課税枠である「年収103万円の壁」について、基礎控除48万円と給与所得控除55万円をそれぞれ10万円引き上げ、123万円(基礎控除58万円+給与所得控除65万円)に引き上げる方針を示していました。

 

 年収の壁見直しに関する大綱の主なポイントはこちらをご覧ください。

 

 今回の修正案は、給与所得控除は当初案のとおりですが、基礎控除を年収に応じて段階的に引き上げるもので、やや複雑な仕組みとなっています。

 

 国民民主党との間で「178万円を目指して引き上げる」とする3党幹事長合意に基づき協議を継続してきた結果、「基礎控除の引き上げは憲法で定める生存権に基づくべき」との国民民主党の主張を受け、政府・与党は、東京都の生活保護基準や最低賃金の水準などを考慮し、年収200万円以下の低所得層の税負担を軽減するため、課税最低限を123万円から160万円に引き上げることにしました。

 

 主なポイントは以下のとおりです。

①年収200万円以下の層は課税最低限を160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)とし、低所得者層の税負担に対する配慮として恒久的措置とする。

 

②年収200万円以上の層は、高所得者優遇とならないよう、基礎控除の上乗せに4段階の所得制限を設け、一人当たりの減税額が一定の幅に収まるようにする。

 

 中所得層を含めた税負担の軽減は、物価上昇に賃金上昇が追い付いていない現状を踏まえ、2025年と2026年の2年間の限定措置とする。

 

 この基礎控除の上乗せ特例は以下のとおりですが、年収850万円以下の層を合計すると約4,600万人で、納税者の8割が対象になるとされています。

 

・年収200万円以下:95万円(48万円+47万円):約300万人

・年収200万円超475万円以下:88万円(48万円+40万円):約2,500万人

・年収475万円超665万円以下:68万円(48万円+20万円):約1,200万人

・年収665万円超850万円以下:63万円(48万円+15万円):約600万人

・年収850万円超2,545万円以下:58万円(48万円+10万円)

 

 今回の見直しによる税負担の軽減は年間2万円程度ということですが、年収の壁(課税最低限)の見直しは30年ぶりのことで、物価上昇に合わせて今後も控除額を見直す方向性も盛り込まれました。

 

 近年、雇用形態や働き方が多様化し、給与所得者と事業所得者等との間の就労形態の差が小さくなりつつあります。

 

 こうした状況を踏まえて給与所得者以外とのバランスを取るためには、課税最低限の見直しは給与所得控除の引き上げではなく、基礎控除をさらに引き上げるべきだとする考え方もあります。

 

 年収の壁の問題は、人手不足対策としては、社会保険料の「106万円の壁」や「130万円の壁」対策がより重要とされています。

 

 これらの壁は、特定の年収を超えると税や社会保険料の負担が増加し、手取りが減少する現象を指します。

 

 今回の税制改正は、年収の壁問題に一定の対応を示していますが、社会保険制度全体の見直しを含めた抜本的な改革には至っていません。

 

 恒久的な財源の問題を含め、今後、さらなる議論と調整が必要とされています。