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暗号資産への飴と鞭〜ETF解禁と税制改正で何が変わる?〜

 報道によると、暗号資産で運用する上場投資信託(ETF)の解禁も視野に、暗号資産を有価証券に並ぶ金融商品として位置づけ、開示ルールなどの規制を強化することを検討しているようです。

 

 現物の暗号資産は総合課税の雑所得として扱われるため、売買益などに対して最大55%の税金が課されますが、証券市場で取引できる暗号資産の現物ETFならば、譲渡益に対して「申告分離課税」が適用され、20.315%の税率で済みます。

 

 さらに、国内上場株式やETFと同様に、ビットコインETFが「譲渡所得」として扱われる場合、最長3年間の損失繰越による「損益通算」が可能となり、「特定口座(源泉徴収あり)」を利用することで原則として確定申告が不要になります。

 

 暗号資産の税制改正については、かねてより業界団体などから要望がありました。

 

 2024年8月、金融庁が暗号資産取引の課税上の取り扱いを検討すると表明し、2025年度税制改正大綱には暗号資産を「広く国民の資産形成に資する金融商品」として位置づけ、課税のあり方について見直しを検討するよう明記されました。

 

 また、国税庁が2027年から暗号資産の取引情報を海外の税務当局と共有するとの報道がありました。

 

 非居住者の暗号資産等に係る取引情報等を、国内の暗号資産取引業者などが税務当局に報告することを義務付ける「暗号資産等報告枠組み(CARF)」といわれる制度です。

 

 これは、租税条約等に基づく情報交換のうち、いわゆる自動的情報交換の一つとして行われます。

 

 2025年度税制改正大綱でも、CARFの整備が盛り込まれています。CARFにより非居住者のキャピタルゲインを把握することができます。

 

 これらの改正は、2027年に初回の情報交換を実施することを想定し、2026年1月1日に施行予定とされています。

 

 すでに、外国の金融機関等を利用した国際的な脱税や租税回避に対処するため、非居住者(個人・法人等)の金融口座情報(氏名・住所・口座残高など)を税務当局間で定期的に交換するための国際基準である「共通報告基準(CRS)」が策定され、日本も、租税条約等の規定に基づき、各国の税務当局と情報交換しています。

 

 国税庁が公表しているCRS情報の活用事例を見ても、国際的な情報共有が進むことで、海外取引を利用した不正はより確実に捕捉される可能性が高まっており、調査の端緒としてだけでなく、不正を未然に防ぐ効果も期待できます。

 

 そして、今後は外国の暗号資産取引業者を利用した暗号資産の取引にも網がかかることになります。

 

 米国では2024年1月、ビットコインを運用対象とするETFがSECによって承認され、2025年1月には暗号資産に好意的なトランプ氏の大統領就任式と軌を一にしてビットコインの価格は10万9000ドル(約1700万円)を突破し最高値を更新しました。

 

 今後は日本でもビットコインETFの解禁に向けた動きが広がっていくことが予想されます。

 

 暗号資産は値動きが激しく、現在はバブルの様相を呈している感もあります。

 

 過大評価された資産を購入し、それをさらに高値で売却して利益を得ようとする「大ばか理論」に基づいているという人もいます。

 

 取引にあたってはくれぐれも慎重に、そして、申告漏れにも注意が必要です。