2025年度税制改正大綱では、iDeCo(個人型確定拠出年金)に関して複数の重要な変更が決定されました。
iDeCoは、公的年金に上乗せする個人型の確定拠出年金で、掛金を所得から控除できる優遇措置が設けられています。
この改正は、「貯蓄から投資へ」の流れを加速し、国が目指す「資産運用立国」の実現に向けた取り組みの一環であり、長寿化社会に対応し、個人の資産形成を促進することを目指しています。
主な変更点は以下の通りです。施行時期は未定ですが2027年以降と思われます。
掛け金上限額の引き上げ
①自営業・フリーランス:月額6.8万円から7.5万円へ
②企業年金がない会社員:月額2.3万円から6.2万円へ
③企業年金がある会社員・公務員:企業年金の掛金と合算で月額5.5万円から6.2万円へ(iDeCoの上限2万円撤廃、公務員は5.4万円)
④扶養配偶者(国民年金第3号被保険者):変更なし(月額2.3万円)
DC(企業型DC・iDeCo)の5年ルールから10年ルールへの変更
退職金と確定拠出年金(DC)の一時金受取に関する退職所得控除の「5年ルール」が「10年ルール」に変更されます。改正は2026年からの予定です。
この見直しにより、DCを先に受給した場合、DC受給年を含めて10年以内に退職金を受け取ると、重複期間分を除いて計算するため退職所得控除額が減るケースが生じます。
改正案の理由は、「受け取る時期の違いで差が生じるのは、課税の公平性の観点で議論があったため」とされています。
ただし、10年ルールへの変更については、60歳で受給可能になったらDCを一時金で受け取ろうと考えていた人々にとっては不利な変更となるため、「iDeCo改悪」と呼ばれ、批判の声も上がっています。
しかし、実際に改正の影響を受ける人は限定的とみられます。多くの企業では定年が60歳であり、再雇用される場合でも退職金の支給は60歳時点で行われるケースが一般的で、DCの受取も原則60歳以降となるため退職金の前に受け取れるケースは多くないためです。
なお、上記とは逆に退職金を先に受給した場合は、「退職金受給年を含めて20年以内にDCを受け取ると、重複期間分を除いて退職所得控除額を計算する」こととされています。
これは、2022年4月に DCの一時金受取期間が5年延長され、75歳までとなったことに伴い改正されました。
掛け金の拠出可能年齢の引き上げ
iDeCoの加入可能年齢が60歳未満から65歳未満に拡大されました。また、企業型DCについても、65歳未満から70歳未満に加入可能年齢が引き上げられています。
これにより、これまで60歳以上70歳未満でiDeCoに加入できなかった人のうち、「iDeCoの加入者・運用指図者だった」または「企業型 DC等の私的年金の財産をiDeCoに移換できる」人で、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っていない人であれば、新たにiDeCoに加入できるようになります。
具体的には、第2号被保険者で65歳以降も厚生年金に加入している会社員や、60歳以上で公的年金に加入していない退職者や自営業者、フリーランスなどを想定しているようです。
改正の目的と効果
この改正により、個人がより多くの資金を非課税で運用できるようになり、老後の資金確保に向けた資産形成の機会が拡大します。
特に、会社員や公務員にとっては、大幅な上限額の引き上げにより、より積極的な資産運用が可能となります。
最後に
改正内容は2025年度税制改正大綱に基づくものであり、今後の国会審議等により変更される可能性があります。
iDeCoの加入者数は増加傾向にあり、今回の改正により国民の資産形成が促進されると期待されます。
また、企業にとっても従業員の退職金制度設計の見直しを促すきっかけとなる可能性があります。
実際の運用にあたっては、個人の状況や将来の資金需要を考慮し、慎重に判断する必要があります。