国税庁は12月6日、「外国税額控除に関する明細書」の記載に誤りがあり、この明細書に沿って分配時調整外国税相当額控除の適用を受ける人が外国税額控除額を計算すると、過大に算出される場合があると公表しました。
また、国税庁ホームページ「確定申告書等作成コーナー」においても、同様の誤りがある明細書が作成されるプログラムとなっていました。
具体的には、 分配時調整外国税相当額控除の適用を受ける人の外国税額控除の控除限度額の計算の基礎となる所得税及び復興特別所得税の金額は、それぞれ分配時調整外国税相当額控除の金額を控除した後の金額となるにもかかわらず、当該明細書では、同控除を控除する前の金額を記載するよう誤った案内をしていたということです。
この記載方法の説明(控用の裏面の「書き方」)の誤りについて、国税庁のホームページ「外国税額控除に関する明細書」の様式誤り等に関するお知らせで注意喚起を行っています。
外国税額控除とは、 二重課税を調整するため、外国における事業の所得や外国籍証券に直接投資を行った場合の配当や利子など、外国で課された税額のうち一定の金額を、日本の所得税・住民税から控除する制度です。
以前は、国内籍証券を通じて外国に投資を行った場合の二重課税調整は限定的でしたが、 分配時調整外国税相当額控除の導入により、より多くの投資家が二重課税の調整を受けることができるようになりました。
分配時調整外国税相当額控除は、国内籍の公募投資信託等を通じて外国資産に投資を行う場合、2018年度税制改正により、2020年1月1日以後に支払われる分配金から、国内の所得税の源泉徴収段階での二重課税調整制度として導入されました。
上記の調整後、支払いを受けた公募投資信託等の収益の分配金について、源泉徴収ありの特定口座にて保有する証券投資信託については、確定申告を要しませんが、個人の投資家が確定申告を選択する場合、総合課税と申告分離課税のいずれを選んだ場合であっても、証券会社等が調整を行った外国所得税相当額を、一般の外国税額控除と区別して、その年分の所得税の額から控除することになります。
分配時調整外国税相当額控除は、まず所得税額から控除し、所得税額から控除しきれないときは残額を復興特別所得税額から控除します。
復興特別所得税額からも控除しきれないときは切り捨てとなり、その控除しきれない部分については還付されません。
また、住民税については控除対象外となります。対象となる投資信託等をNISA口座で保有されている場合は、国税分は非課税となり、外国との二重課税状態が発生しませんので、本措置の対象となりません。
今回の様式誤り等により申告内容に影響を受ける可能性があるのは、外国税額控除のほか分配時調整外国税相当額控除の適用がある場合に限られます。
その場合でも、必ず申告内容の是正を要するわけではありませんが、国税庁では、様式誤り等により申告内容の是正を要すると見込まれる納税者に対しては、所轄の税務署から、ご自身の申告内容の見直し、申告誤りのあった内容の是正と不足分の税額の納付を行っていただくことをお願いすることとしています。
また、該当する納税者には順次ご連絡(税務代理権限証書が添付されている場合は税理士にも連絡)させていただくこととしていますが、正しい外国税額控除の金額を算出するツールが用意されていますので、このツールを使用し、ご自身で正しい外国税額控除の金額を算出し、申告内容の是正の要否を判断することもできます。
当該ツールについては、国税庁のホームページ「外国税額控除に関する明細書」の様式誤り等に関するお知らせにリンクが貼られています。
なお、「確定申告書等作成コーナー」の修正プログラムのリリースは2025年1月6日に実施される予定です。