· 

仕組債の闇

仕組債の販売額・残高の推移を示すチャート
出所:金融庁HP〜リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果〜

 近年、金融機関による仕組債の不当販売問題が社会問題化しています。

 

 昨年6月には、千葉銀行や武蔵野銀行などが仕組債を顧客に十分な説明もなく販売していたとして、金融庁から行政処分(業務改善命令)を受けました。

 

 銀行がその系列の証券会社に顧客を紹介し、手数料を獲得するために、投資の知識や経験があまりない顧客に、実際のリスクについて十分な説明を行わず、仕組債を適合性原則や説明義務に違反して販売する、ということは、メガバンク系証券会社などでも、以前から多く指摘されています。

 

 今年7月の金融庁の発表によると、昨年上期の大手銀行や地方銀行、証券会社が個人向けに販売した仕組債の総額が、直近のピーク時(2020年下期)に比べて10分の1以下になりました。

 

 ようやく最近になり、多くの金融機関は、個人顧客への仕組債の販売を販売停止・縮小に至りました。

 

 仕組債は、債券をベースに、スワップやオプションなどのデリバティブ(金融派生商品)を組み合わせた複雑な金融商品です。高い利回りを期待できる一方で、その構造は非常に複雑で、一般の投資家にとって理解が難しい点が特徴です。

 

 まず、仕組債における最大の問題点は「隠れた手数料」の存在です。これらの手数料は、商品が組成される際に金融機関に差し引かれ、投資家には開示されないため表面には現れません。

 

 そのため、投資家は表面上の高い利回りに目を奪われがちですが、実際には手数料によって収益が大きく目減りしてしまいます。

 

 このような問題に加えて、仕組債のリスクは、株価、為替、金利など、複数の要因に連動するため、非常に複雑で予測が困難です。

 

 これらの要因が不測の事態に陥ると、元本が大幅に減少したり、ゼロになる可能性もあります。

 

 あらかじめ定められた株価や為替、金利などの参照指標に基づきクーポン(利子)または償還金額が決定される仕組債については、当該参照指標の変動により投資家が受け取るクーポン(利子)または償還金額が減少するおそれがあります。

 

 デリバティブが組み込まれることで、通常の債券よりも高い利回りを期待できる一方、リスクが非常に高くなることが特徴です。特に、個人投資家が仕組債に投資する際は、その複雑なリスクを十分に理解することは困難です。

 

 そのため、このようなリスクを十分に理解せずに投資を行うことが多く、市場環境が変化した際に思わぬ損失を被るケースが後を絶ちません。

 

 金融機関は、仕組債の複雑さを十分に説明せず、高い利回りだけを強調して販売を行うケースが少なくありませんでした。

 

 投資家の経験や知識不足に乗じ、リスクを過小評価させ、契約を結ばせるという不正行為がかつては横行していました。

 

 仕組債の問題は、多くの投資家に深刻な影響を与えています。特に、投資の初心者や高齢者など、リスクに対する理解が低い人たちが被害に遭いやすい傾向にあります。

 

 仕組債の損失により、老後の資金を失うなど、生活に大きな影響が出るケースも少なくありません。

 

 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)には、仕組債に関連する多くの相談が寄せられています。

 

 その中には、「説明があった」「リスクについて理解していなかった」など、投資家が仕組債を購入した際、販売担当者からは高い金利が強調され、リスクや手数料についての説明が不十分だったことが報告されています。

 

 まさに、金融機関は自己の利益を優先し、顧客の損失を無視して仕組債を組成・設計して売り込んでいるといわれる所以です。

 

 投資は自己責任で行うべきですが、投資家は十分に注意する必要があります。

 

最後に

 仕組債は、金融機関が商品を設計する際にデリバティブ取引を組み込むことで、表面上の利益が魅力的に見えるものの、実際には内部で取られた手数料が大きいため、実際に投資家が受け取るリターンは期待したほど得ることが難しいのです。

 

 さらに、参照指標の変動により投資家が受け取るクーポン(利子)や償還金額が減少する可能性があります。

 

 結論として、表面上の高い利回りに惑わされず、複雑な構造や隠れた手数料に注意を払い、リスクが高いことやコストが不透明であることを踏まえ、個人投資家は仕組債には手を出すべきではありません。

 

 どうしても、高いリターンを求めるのであれば、リスクが高いことを承知の上、高配当株やハイイールド債など、よりシンプルで透明性の高い金融商品を選択する方が賢明だと思います。

 

 しかし、理解不足のまま仕組債に投資し、思わぬ損失を被ってしまった場合は、取引先の金融機関に相談してみましょう。

 

 それでも問題が解決しないときは、上記のFINMACフィンマックに相談することも検討してみてください。

 

 FINMACは仕組債などの取引に関するトラブルについて、相談や苦情を受けつけ、公正・中立な立場で解決するところです。

 

 金融商品取引法に基づく指定紛争解決機関(金融ADR機関)であり、金融庁や法務省から指定・認証を受けています。

 

 詳しくは、証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)のHPをご覧ください。