短時間労働者(週20時間以上)を健康保険・厚生年金保険の適用対象とする企業等の規模要件が見直され、10月1日より、従業員が51人以上の企業等で働く短時間労働者が、健康保険・厚生年金保険の適用対象となりました。
厚生労働省によると、新たに20万人程度が加入対象になると見込まれています。
厚生年金に加入することで、同時加入となる健康保険による保障も確保され、 休業時に傷病手当金や出産手当金が受け取れるなど、保証が手厚くなるほか、老後の年金額が増加するというメリットがあります。
保険料は事業主と労働者が折半で負担するため、事業主にとって保険料負担が増大する懸念もあります。
今年7月3日、厚生労働省は公的年金の将来の給付水準を示す「財政検証」の結果を公表しました。
5年に1度実施するもので、少子高齢化が給付水準にどういった悪影響を及ぼすか、100年先までの人口構成や経済情勢を仮定し、年金の給付水準や財政の健全性を確認するものです。
さらに、一定の制度改正を想定した以下のオプション試算も示されました。
(1)厚生年金の適用拡大
(2)基礎年金の拠出期間延長(今回は改正を見送ることとされました。)
(3)マクロ経済スライドの調整期間の一致
(4)在職老齢年金の見直し
(5)標準報酬月額の上限引上げ
また、(1)厚生年金の適用拡大について、勤務先の企業規模や働き方によって不公平感が生まれないようにするため、厚生労働省は企業規模要件等を撤廃する方針のようです。
2025年の通常国会に関連法案を提出し、実施時期など具体的な改正案は社会保障審議会の年金部会で年末までに固める予定です。
企業規模要件の撤廃により、新たに約70万人が対象となり、5人以上の個人事業所では全業種対象で約20万人が対象となることで、全体で約90万人が加入対象となる見込みです。
これにより、第3号被保険者が減少する方向に進むとともに、人手不足問題の緩和や、年収の壁(106万円の壁など)による働き方制限の解消につながることが期待されます。
これらの改革は、年金制度の持続可能性を高め、給付水準を維持しつつ、現代の労働環境や高齢者の労働状況に対応することを目指しています。
各制度の実現には、企業の事務負担や経営への影響を踏まえて必要な配慮措置や支援策も必要とされ、関係者間の調整や国民の理解を得ることが重要な課題となります。