相続が発生した際、被相続人が家族に預金先の情報を伝えていない場合、相続人は預金の存在すら知らない可能性があるという話を前回しました。
一方で、保険や株式については、相続人が被相続人の契約状況を確認するための制度が整備されています。
今回は、保険や株式の照会制度についてご紹介します。
生命保険契約
家族間で保険契約に関する情報が共有されていない場合、家族が亡くなったり認知症になったりした際、保険金や給付金を請求できるかどうか、どこに連絡すればよいのかが分からないケースがあります。
そのような場合、まず保険証券の有無や、保険会社からの通知、通帳での保険料支払いを確認します。
それでも生命保険契約の有無が分からない場合、生命保険協会を通じて全国の生命保険会社に一括で照会できる「生命保険契約照会制度」を利用することができます。
この制度は有料ですが、家族が加入していた生命保険契約を容易に見つけることができます。
なお、照会は法定相続人等に限られます。契約者が認知症の場合、法定代理人または任意後見制度に基づく任意代理人、あるいは3親等以内の親族およびその任意代理人が照会可能です。
また、死亡が照会事由の場合、死亡日から最低3年間はさかのぼって調査が行われます。
具体的な方法については、以下の生命保険協会のウェブページをご確認ください。「生命保険契約照会制度のご案内」
損害保険契約
損害保険の契約者が死亡した場合、契約が失効しない限り、契約者としての地位は相続財産となります。
相続が発生すると、名義を変更するか解約の手続きを行う必要がありますが、損害保険契約の有無を一括で照会できる制度はありませんので、各
損害保険会社に個別に問い合わせる必要があります。
ただし、災害救助法が適用された地域などで、家屋の流失や焼失により損害保険会社との契約に関する手掛かりを失った方には契約照会制度はあります。
日本損害保険協会では、2014年7月1日から、「自然災害等損保契約照会制度」を実施しています。
この制度は、災害救助法が適用されない地域では利用できないため、その場合は各損害保険会社に個別に問い合わせる必要があります。
具体的な方法については、以下の日本損害保険協会のウェブページをご確認ください。「自然災害損保契約のご照会」
なお、生命保険・損害保険ともに、保険法に基づき、保険金等を請求する権利は3年間で時効となるため注意が必要です。
ただし、実際には3年経過していても、保険会社は時効を主張せずに支払いに応じるケースもあるようですから、まずは保険会社に相談することが大切です。
証券口座
ご本人や亡くなった方の証券口座が開設されている証券会社を調べたい場合は、証券保管振替機構を通じて照会することができます。
証券保管振替機構は、株式などの集中保管、名義書き換え、売買に伴う受け渡し、発行会社への株主通知などを行っています。
本サービスを利用する際は、証券保管振替機構に対して直接、開示請求の手続きを行う必要があります。開示請求には費用がかかりますが、家族が開設していた証券口座を簡単に見つけることができます。
具体的な方法については、以下の証券保管振替機構のウェブページをご確認ください。「証券保管振替機構・登録済加入者情報の開示請求」