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富裕層課税の事例

東京国税局の建物の写真

 大手パチスロ機メーカー「ユニバーサルエンターテインメント」の創業者が、東京国税局の税務調査を受け、香港の資産管理会社の所得をめぐり、東京国税局から2020年までの3年間でおよそ50億円の申告漏れを指摘され、無申告加算税を含め約27億円を追徴課税されていたことが報道されました。

 

 この事例は、近年国税庁が強化している富裕層への課税対策の一環として注目されます。

 

 創業者の岡田和生元会長は処分を不服として国税不服審判所に審査請求しましたが、2023年末に棄却されたということです。

 

 報道によると、香港の資産管理会社は、「ユニバーサルエンターテインメント」の株の配当や、利息によって、多額の所得を得ていましたが、東京国税局は、香港の会社に事業実態がないと判断し、同社の所得を元会長個人の所得と合算して日本で申告する「外国子会社合算税制(CFC税制)」(タックスヘイブン対策税制)を適用したようです。

 

 同税制は、日本法人や日本居住者らが計50%超の株を持つ外国法人について、現地での法人税負担割合が20%未満で、事業実態がない場合などに適用されます。

 

 一般的に法人に適用されるケースが多い制度ですが、近年は富裕層が節税目的で税率の低い国や地域に資産を移す動きが活発化していることから、個人への適用事例も増えています。

 

 国税庁は、2022事務年度における富裕層の申告漏れ所得が過去最高の980億円に上ったことを発表しています。

 

 これは、国税庁が富裕層や海外投資家への調査を強化している成果と考えられます。

 

 具体的な調査方法としては、国外送金調書・国外財産調書、租税条約に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを活用した海外資産の把握や、高額所得者への個別調査などが挙げられます。

 

最後に

 近年、各国間の税務当局の連携強化により、海外投資絡みの申告漏れが発覚するケースが増えています。

 

 今後も国税庁は富裕層への課税強化を進めていくことを重点方針としています。