報道によると、日産自動車が「外国子会社合算税制(CFC税制)」(タックスヘイブン対策税制)を適用した課税処分の取り消しを求めた訴訟の上告審で、日産側の逆転敗訴が確定したことがわかりました。
最高裁は、二審の東京高裁判決(課税処分の取り消し)を破棄し、課税処分は適法と判断しました。
この結論は5人の裁判官全員一致ということです。
同税制は、税率の低い国や地域にある関連会社の経済活動に実態がない場合などに、日本の親会社の所得と合算して課税し、国際的な租税回避を防ぐ目的で1978年に導入されました。
今回、問題となった関連会社は税負担の軽い英領バミューダ諸島にある日産の間接100%出資のキャプティブ保険子会社NGRE(特定外国子会社等)です。
キャプティブとは、企業自身の保険の引受を目的として設立された保険子会社のことをいいます。
この事案の概要は、メキシコで車の販売金融事業を行っている日産の間接100%子会社NRFM (関連者)が、顧客に車の購資金を貸し付ける際、顧客は、メキシコ法人NRFMと日産グループ外の保険会社(非関連者)が締結した元受保険に加入して保険料相当額を支払うなどとされていました。
そして、このグループ外の保険会社(非関連者)が負う保険リスクの70%をバミューダ法人NGREが再保険として引き受け、再保険料を得ていました。
本事案は、バミューダ法人NGREがCFC税制の適用除外基準である「非関連者基準」を満たすかどうかが争われた事案です。
非関連者基準とは、バミューダ法人が主として関連者以外の者と取引を行っている場合は同税制が適用されないというものです。
少し難解ですが、要するに元受保険契約の「保険の目的」がメキシコ法人NRFM(関連者)の顧客に対する債権であるのか、あるいは顧客の生命や身体等なのかが争点とされました。
この取引について、東京国税局はバミューダ法人NGREが得ていた再保険料は実質的にはグループ外企業からの収入とみなせないとしてCFC税制を適用し、2017年3月期に約200億円の申告漏れを指摘し、過少申告加算税を含めた約50億円の追徴課税をしたというものです。
国側は上告審弁論で、今回のようなケースを認めれば「グループ外企業を介在させた租税回避行為を防ぐことができず、規定の趣旨に反する」と指摘。
日産側は、再保険の目的などを踏まえればグループ外からの収入に該当すると反論していました。
判決は、法令の趣旨に加え、元受保険契約の実質に照らせば、本件再保険契約に係る保険は、メキシコ法人NRFM(関連者)が有する債権に係る経済的不利益を担保するものであるから、グループ外収入には当たらないとした。
したがって、バミューダ法人NGREについて、実質的にグループ外収入は50%以下で、同税制の適用対象になると結論付けた。至極真っ当な判決だと思います。
なお、一審の東京地裁は、バミューダ法人NGREがメキシコにあるグループ外企業から得ていた再保険料について、実質的にはグループ外からの収入とはみなせないと判断し、日産側の請求を棄却。
これに対して、二審の東京高裁は、グループ外との取引と認め、50%超の条件を満たしているとして、課税処分を取り消していました。