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査察調査の概要が公表されました

着手・処理・告発件数、告発率の状況及び脱税額の状況の表
出所:国税庁HP〜令和5年度査察の概要〜

 国税庁は、2023年度(今年3月までの1年間)の査察調査の概要を公表しました。

 今回の発表では、悪質な脱税者に対する厳正な対応が強調されています。

 

 査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及することで、その一罰百戒の効果を通じて適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持を目指しています。

 

 2023年度の査察調査では、101件の悪質な脱税事案が検察庁に告発されました。

 これらの事案に係る脱税総額は89億円であり、1件当たりの脱税額は約88百万円でした。告発率は66.9%と高い水準を示しています。

 

 2023年度は、査察制度の目的に鑑み、特に、消費税事案、無申告事案、国際事案、時流に即した事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案を重点事案として積極的に告発されています。

 

消費税不正還付事案

・同一の高級腕時計のシリアルナンバーや不正に入手したパスポートの写しを用いて書類を偽造し、架空の課税仕入れ及び架空の輸出免税売上を計上することで、不正に消費税の還付を受け、又は受けようとした

・輸出物品販売場の許可を受けたコンビエンスストアにおいて、虚偽のパスポー ト情報を用いて免税商品を販売したと装い、架空の輸出免税売上を計上することで、不正に消費税の還付を受け、又は受けようとした

・虚偽の不動産売買契約書を作成して、不正加担法人から航空機格納庫を購入したと装い、架空の課税仕入れを計上することで、不正に消費税の還付を受けようとした

・不正加担法人からキャッシュレス決済端末を仕入れたと装い、架空の課税仕入れを計上するとともに、資金を循環させて架空の輸出免税売上を計上することで、 不正に消費税の還付を受けていた

 

無申告事案

・アフィリエイト事業で収入を得ていたにもかかわらず、虚偽のコンサルティング契約書を準備するなどして所得を隠匿した上で、法人税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、法人税を免れていた

・タトゥースタジオを経営するとともに、自らタトゥーの施術を行うことで収入を得ていたにもかかわらず、知人や親族名義の預金口座を使用して所得を隠匿し た上で、所得税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、所得税を免れていた

・所得税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、出版社からの原稿料や印税収入などに係る所得税を免れていた

 

国際事案

・虚偽の株式譲渡契約書を作成して、自己が所有する未公開株式を自らが主宰する海外法人へ譲渡したと装い、未公開株式の譲渡収入の一部を海外法人の収入であるとして、所得税を免れていた

・実質経営する法人において、架空の経費を計上することで、法人税及び消費税を免れ、得た資金の大半を海外における生活費やギャンブルに充てていた

 

社会的波及効果の高い事案

・脱税請負人が、脱税のために虚偽の経費を計上するスキームを節税と称して広く納税者を勧誘し、 納税者らが当該スキームを利用して法人税及び消費税を免れていた

・インターネット上の物品の転売やそのノウハウの指南を業とする者が、架空の経費の計上や売上を除外することで、自身の所得税及び主宰法人の法人税を免れていた

・半導体製造工場の建設が盛んな地域における工場内設備工事事業者が、架空の経費を計上することで、法人税及び消費税を免れていた

・コロナ禍におけるペット需要の高まりを受けたブリーダー業を営む者が、架空の経費を計上することで、所得税を免れていた

 

査察調査により天井裏から発見された現金の写真
出所:国税庁HP〜国税庁レポート2024〜

 脱税によって得た不正資金は、脱税者が高級車の購入や有価証券等への投資など数千万円規模の費消をしていた事例も見られましたが、その多くは現金や預貯金として留保されていました。

 脱税によって得た不正資金の隠匿場所は、天井裏、階段下収納、蔵に置かれた木箱、銀行の貸金庫など様々であったようです。

 

最後に

 査察調査では、脱税者の収入や資産の全てを調査します。この査察調査には、全国で約1,500名の国税査察官が当たっています。

 脱税は犯罪であり、有罪になると最⻑で懲役10年+罰金が科されます。これに伴う精神的苦痛や経済的負担、懲役刑、名誉や信用の失墜など、後悔してもしきれない結果を招きます。

 

 

 国税庁は今後も厳格な態度で脱税行為に対処し、適正な納税の確保に努めていくことが期待されます。税務コンプライアンスを徹底し、適正な申告と納税を心がけることが重要です。