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金融所得が保険料に反映される?

厚生労働省の庁舎
厚生労働省

 報道によると、政府は国民健康保険や75歳以上の後期高齢者医療制度、介護保険の保険料の算出方法に金融所得を加えることを検討しているようです。

 

 近年、少子高齢化の影響により、社会保障制度の財源確保が課題となっています。

 そこで政府は、株の配当などの金融所得を医療・介護保険料の算定に反映させる仕組みの検討を進めています。

 

 これは、全世代が能力に応じて支え合う社会保障制度の実現を目指す政府・自民党の取り組みの一環です。

 

 特に、個人投資家に対する優遇税制「NISA」の運用益は、資産形成を促進するため非課税であり、これを算定対象に含めない方針が示されました。

 これは、貯蓄から投資への動きを後押しする政府の方針に沿うものです。

 

 現在、自営業者などが加入する国民健康保険や75歳以上の後期高齢者医療制度、介護保険は所得に応じて保険料が決定されますが、金融所得は確定申告をしなければ保険料に反映されません。

 これにより、確定申告を行う人と行わない人との間で不公平が生じています。

 

 一方で、会社員が加入する健康保険は、賃金のみで保険料が決定され、金融所得は反映されません。

 

 ただ、保険料が労使折半の会社員の保険では、事業主が個人情報でもある個人の資産状況まで把握することは難しいこともあり、厚生労働省は、健康保険の保険料に金融所得を反映することについて慎重な姿勢を保っており、「制度の趣旨、実務等の観点から課題が大きい」としています。

 

 したがって、今回の検討対象は健康保険に加入している会社員ではなく、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入する自営業やフリーランスなどの個人事業主、年金生活者です。

 これはこれで不公平な感じもしますが、取りやすいところから取るということかもしれません。

 

 具体的な影響として厚生労働省は、70代後半で金融所得50万円を含む年収320万円の単身者が確定申告を行った場合、保険料が月5500円程度高くなり、介護保険の窓口負担も1割から2割に増加する可能性があるとしています。

 

最後に

 政府は、2023年12月に社会保障の改革工程を閣議決定し、2028年度までにさまざまな影響を分析し、是正策を検討するとしていますので、今後の動向が注目されます。

 

 なお、金融所得のみならず金融資産の保有額についても、負担の判定に利用するように検討していくようです。

 

 日本は少子高齢化により、社会保障のコストは年々増加傾向にあるため、おのずとこれらの保険料の算定対象は広がっていくものと思われます。

 金融所得を保険料算定に反映させることは、公平性を高める目的がありますが、実務上の課題も多いため、慎重な検討が必要です。