はじめに
近年、急速な高齢化社会の進展により、人生100年時代が現実のものとなりつつあります。老後の生活資金をどのように準備していくのか、多くの方が不安を抱えているのではないでしょうか。
そんな中で、2024年からスタートした新NISAは、長期的な資産形成を支援する制度として大きな注目を集めています。
また、加入者が急増しているiDeCoについても、政府は資産運用を後押しするため、掛金の上限引き上げを検討しています。そして、会社員であれば退職金制度も老後の資金準備に役立ちます。
これら3つの制度を活用して、老後の生活資金をしっかりと準備することはもちろん、人生100年時代を豊かに生きるための資金を準備することも可能です。
しかし、せっかく積み立てた資産も、取り崩し方法を間違えると、老後の生活が苦しくなってしまう可能性があります。いざ取り崩す際には、どのような方法が適しているのでしょうか?
主な取崩し方法とそれぞれのメリット・デメリット
1. 定額取崩し
メリット:
・毎年一定額を取り崩すので、生活費の計画が立てやすい
・心理的な負担が少ない
デメリット:
・長生きした場合、後半の生活資金が不足する可能性も
・インフレの影響を受けやすいため、定期的な調整が必要
2. 定率取崩し
メリット:
・毎年、残高の一定割合を取り崩すため、長期的な資産の取崩しが可能(ウィリアム・ベンゲンの4%ルールが有名)
・投資の値動きにより取崩額が変動するため、投資効率が高まる
デメリット:
・取崩額が年々変動するため、生活設計が立てにくい側面も
・次第に取崩額が減少するため、心理的な負担が大きくなる可能性も(ただし、生活費も徐々に減少)
3. 都度取崩し
メリット:
・必要の都度、資金を得られるため、自由に使える
・相続対策として活用できる
デメリット:
・計画的な運用が必要なため、長寿リスクに対応できない
・他の運用方法を検討する必要がある
まとめ
長生きできることは喜ばしいことですが、その分、充実した老後生活を送るための資金計画が重要になってきます。「人生100年時代」といわれ、従来より長期の計画が求められるようになりました。
長寿時代を見据えた資金計画では、インフレリスクのみならず、長寿リスクにも注意が必要です。iDeCoの受取時期や年金の開始時期なども考慮して、賢く資産を組み合わせましょう。
簡単な取崩方法がベストとは限りません。人生終盤の大切な資金を有効活用するため、出口戦略はご自身のライフプランやリスク許容度に合わせて最適な方法を選択することが重要です。
「買いは技術、売りは芸術」という投資の格言もあります。始めるよりやめる方が断然難しいのです。
上記で紹介した3つの方法は、それぞれ一長一短がありますので、複数の方法を組み合わせることも可能です。次のポイントについても考えながら、自分に合った取崩方法を検討することをおすすめします。
・ライフプラン:いつ、どのようなタイミングで資金が必要になるのか
・投資状況:投資商品の種類、配当状況、含み損益など
・健康状態:介護が必要になった場合の費用
・相続対策:家族への財産承継の希望
・「ゼロで死ぬ」:ビル・パーキンス著『DIE WITH ZERO』。 人生において大切なのは富の最大化ではなく、経験の最大化だと著者は説いています。
つまり、「ゼロで死ぬ」とは、誰も自分の寿命を予想できませんが、老後のための十分な備えをした上で、人生の最期に資産をゼロにするほど思い切り良い経験をすることで、より豊かな人生を送ろうという考え方です。