確定申告の時期ですので、相続で取得した資産の減価償却費の計算において間違えやすいポイントをご紹介します。
相続人が、被相続人(亡くなった人)の資産を引き継ぎ、減価償却費の計算を行う場合、相続により取得した者が引き続き所有していたものとみなされます。
したがって、相続人は、被相続人の取得価額、取得時期、耐用年数、経過年数及び未償却残高を引き継ぐこととなります。
ただし、償却方法は引き継ぎません。
例えば、平成19年4月1日以後に取得した建物の減価償却の方法は、定額法(新定額法)とされ、この「取得」には、相続、遺贈又は贈与によるものも含まれることから、償却方法の新・旧の判定は、相続の日に取得したものとして判定します。
なお、譲渡の場合の短期・長期の判定に使用する取得日は、被相続人の取得日を使用します。
例えば、平成19年3月31日以前に取得したものであっても、平成19年4月1日以後の相続からは、被相続人から引き継ぐ簿価がすでに5%に達していたとしても、旧法の計算は行わず、通常どおり新定額法で計算します。
新定額法での償却は1円に達するまで行います。
また、相続により取得した資産の減価償却費の計算における耐用年数は、中古資産に係る見積もりによる使用可能期間に基づく年数とすることはできません。
これは、相続により取得した者が引き続き所有していたものとみなすこととされているからです。
減価償却費の計算では、1月未満の端数は切り上げて1月と数えるため、相続開始年の被相続人の準確定申告及び相続人の確定申告における減価償却費の計算上使用する月数を合計すると13月となります。
なお、被相続人が3年一括償却を適用している場合、相続人はその減価償却資産について、相続開始年は減価償却ができないことになります。
【設例】
相続人は、令和5年5月10日に被相続人からアパートを相続しました。このアパートの取得価額等は次のとおりですが、被相続人の準確定申告及び相続人の確定申告における令和5年分の償却費の額はいくらですか。
取得年月:平成12年1月
取得価額:10,000,000円
法定耐用年数:22年(旧定額法及び定額法の償却率0.046)
令和5年1月1日の未償却残額:500,000円(取得価額の5%相当額)
【回答】
被相続人の準確定申告における減価償却費の計算
平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産で、各年分の不動産所得等の金額の計算上、必要経費に算入された金額の累積額が償却可能限度額(建物についてはその取得価額の95%相当額)に達している場合には、未償却残額をその達した年分の翌年分以後の5年間で、1円まで均等償却することとされています。
また、年の中途で死亡した場合の必要経費に算入される金額は、その償却費の額に相当する金額を12で除し、これにその年1月1日からその死亡の日までの期間の月数を乗じて計算した金額とされています。
したがって、被相続人の準確定申告における減価償却費の計算は次のようになります。
(500,000円-1円)÷5年×5/12=41,667円(相続時の未償却残額458,333円)
相続人の令和5年分の確定申告における減価償却費の計算
相続人の令和5年分の確定申告における減価償却費の計算は次のようになります。
10,000,000円×0.046×8/12=306,667円(未償却残額151,666円)
出所:国税庁HP~平成19年4月1日以降に相続により減価償却資産を取得した場合~