先日の国税庁の発表によれば、CRS情報(共通報告基準に基づく金融口座情報)について、昨年6月までの1年間に外国の税務当局から入手した金融口座情報は約252万件で、口座残高は計約16兆円に上りました。
CRS情報の活用事例
受領したCRS情報から、複数の国内外法人の役員を務める個人Aが、X国にある金融口座に多額 の資金を保有していることを把握。
口座残高が前年から大幅に増加しており、申告に反映されてい ない収入があることが想定されたため、調査に着手した。
調査において、当該口座の資金原資の解明を行った結果、個人Aが利子・配当等を含む多額の投 資所得を得ていた事実を把握した。
また、国税庁は先の発表と同時に、外国に5,000 万円を超す資産がある人に提出義務がある国外財産調書の提出状況を公表しました。
昨年6月までの1年間の提出件数が12,494件(前年12,109件)、総額が5兆7,222億円(前年5兆6,364億円)でいずれも過去最高でした。
種類別では有価証券が3兆4,569億円で全体の約6割を占め、以下、預貯金7,775億円、建物4,842億円などが続きます。
国外財産調書制度は、保有する国外財産に関する情報を納税者本人から提出を求める仕組みです。
そこで、適正な提出を確保するための過少申告加算税及び無申告加算税の軽減・加重の特例措置が設けられています。
昨年6月までの1年間に調査したところ、調書を提出せず加算税が加重(+5%)されたのは329件(119億円)、調書の提出後に申告漏れが発覚したものの特例で軽減(▲5%)されたのは146件(40億円)でした。
国税庁では、国際的な脱税及び租税回避に対処するため、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換を積極的に実施しています。
背景には、経済のグローバル化により、国境を越える取引が恒常的に行われ、資産の保有・運用の形態も複雑化・多様化していることがあります。
国税庁は、外国の税務当局から提供されるCRS情報や国外送金等調書・国外財産調書などを活用して、課税上問題があると思われるケースを把握し、必要に応じて調査を行っています。
また、徴収の分野でも、外国の税務当局と協力して相手国の租税を徴収する「徴収共助」の制度を活用しています。
今年1月現在、日本の租税条約のネットワークは154か国・地域をカバーし、今後も情報交換のネットワークを拡大していく予定です。
最後に
国際的な脱税や租税回避に対しては監視が強化されています。
外国に多額の資産を持ちながら申告に反映されていない場合などは、調査の対象となるリスクが高くなります。
調査を受けると時間やコストはもちろんのこと、申告漏れや不正が見つかった場合は、ペナルティが課せられるだけでなく、信用や評判も失う可能性があります。
そのような事態を避けるためには、正しい申告をすることが肝要です。