代表的な暗号資産であるビットコインの価格が昨年後半から活況を呈しています。
これは、米利上げサイクルの終了観測による市場のリスクオンの流れや、4月に「半減」期を迎えて供給が減るとの期待が後押ししていると考えられています。
また、今年になってからは、ビットコインの現物ETF(上場投資信託)の承認期待の思惑などが交錯して乱高下しています。
このような暗号資産市場の動向に伴って、日本でも税制面で追い風が期待できそうです。
これまで、法人が保有する第三者発行の暗号資産は期末に時価(売買価格)と帳簿価額の差額に基づいて益金や損金として計上されていました。
この取扱いは、ブロックチェーン技術を用いたサービスの普及や、それを活用した事業開発などのために暗号資産を継続的に保有する法人に対して、キャッシュフローを伴う実現利益がない(=担税力がない)場合でも課税が行われるものです。
金融庁や経済産業省は、Web3.0分野において海外に遜色ない事業環境の整備を進め、ブロックチェーン技術を活用した起業などを促進する観点から、税制改正を要望していました。
昨年発表された2024年度の税制改正大綱では、譲渡制限など一定の要件を前提とした場合には、この時価評価の適用がなくなる方針が盛り込まれています。
今後、法人は暗号資産やトークンを売却して生じた利益に対してのみ課税されることになります。
これは個人投資家に適用されている税制と同様の扱いへの変更を意味しています。
この改正は、法人による暗号資産の保有と運用における税負担を軽減するものと期待されます。
2023年度の税制改正では、法人が自社で発行する仮想通貨に関してのみ時価評価課税の対象外となりましたが、他社発行分についても同様の扱いを求める声が高まっていました。
一方で、分散型台帳技術を使用する暗号資産等を利用した国際的な脱税及び租税回避を防止する観点から、OECDでは暗号資産等の取引や移転に関する自動的情報交換の国際標準である「暗号資産等報告枠組み(CARF : Crypto-Asset Reporting Framework)」を策定しています。
CARFは、非居住者の暗号資産等に係る取引情報等を、国内の暗号資産取引業者等が税務当局に報告することを義務付ける制度です。
租税条約等に基づく情報交換のうち、いわゆる自動的情報交換の一つとして行われます。
昨年11月、日本を含む48か国・地域は「CARFの実施に向けた共同声明」を発表しました。
2024年度の税制改正大綱でも、CARFの整備が盛り込まれています。CARFにより非居住者のキャピタルゲインを把握することができます。
また、典型的な暗号資産(ビットコイン等)だけでなく、トークン化された金融商品(セキュリティトークン等)やNFT(Non-Fungible Token)等が含まれる可能性もあります。