上場株式等の配当所得については、次の①から③のいずれかの課税方式を選択できます。
①源泉徴収だけで課税関係が完結する申告不要
②上場株式等の譲渡損失と損益通算できる申告分離課税
③配当控除を受けることができる総合課税
昨年分の確定申告までは、課税所得金額900万円未満の場合、配当控除(10%)を受けるため総合課税を選択し、住民税においては申告不要を選択するケースも考えられました。
住民税を申告不要とすれば、国民健康保険料や介護保険料等への影響がありません。
2022年度の税制改正により、2023年分の確定申告から配当控除を受けるため総合課税を選択した場合、住民税においても申告しなければならなくなりました。
したがって、今後は配当控除を受けるため総合課税を選択すべきか否か慎重に検討する必要があります。
総合課税を選択した場合と申告不要を選択した場合の税負担について所得税と住民税の観点から考えた場合、次のとおり課税所得金額が695万円未満の場合は総合課税を選択し配当控除を受ける方が有利といえます。
総合課税(課税所得金額195万円未満)の所得税・住民税の負担率 2.2%( 5%-10%+10%-2.8%)<申告不要(20.315%(15.315%+5%)
総合課税(課税所得金額330万円未満)の所得税・住民税の負担率 7.2%(10%-10%+10%-2.8%)<申告不要(20.315%(15.315%+5%)
総合課税(課税所得金額695万円未満)の所得税・住民税の負担率
17.2%(20%-10%+10%-2.8%)<申告不要(20.315%(15.315%+5%)
なお、上記の株式やETFの配当控除と異なり、証券投資信託は配当控除の割合(5%又は2.5%)が異なりますので、課税所得金額が330万円未満の場合は総合課税を選択し配当控除を受ける方が有利といえます。
ただし、国民健康保険料や介護保険料などの支払いがある方はそれらの負担額についても十分考慮して判断する必要があります。
また、合計所得金額が増加することで配偶者控除など不利になる要素がないかの検討も必要です。
このように、改正により異なる課税方式が選択できなくなり、所得税と住民税との課税方式を一致させることになりました。
この改正は、2023年度分以後の所得税(2024年度分以後の住民税)について適用されます。