相互協議とは、租税条約の規定に基づき、
①国際的な二重課税が移転価格課税等により生じた場合、又は生じると納税者が考える場合、
あるいは②納税者が独立企業間価格の算定方法等に係る二国間の事前確認を求める場合に、
国税庁が納税者の申立てを受けて租税条約締結国・地域の税務当局との間で協議を行う手続です。
国税庁の発表によると、今年6月までの1年間の相互協議事案の発生件数は301 件で、過去最多となりました。
そのうち事前確認に係るものは約80%を占め、残る約20%が移転価格課税などに係るものでした。
事前確認とは、納税者が税務当局に申し出た独立企業間価格の算定方法等について、税務当局が事前に確認を行うことをいいます。
納税者は、確認された内容に基づき申告を行っている限り、移転価格課税を受けることはありません。
ただし、日本国内の事前確認のみでは外国税務当局に課税されるリスクまでは回避できません。
そこで、海外子会社も外国税務当局へ事前確認を申し出て、両国税務当局間での合意を求めるのが事前確認に係る相互協議です。
移転価格税制の適用を受け、巨額の追徴課税を受けるケースもあることから、事前確認は納税者の予測可能性を高めてくれるという点で利点があります。
しかし、事前確認には欠点もあります。時間がかかること、提出書類が多いこと、費用が高いことなどが挙げられます。
したがって、事前確認を申請するかどうかは、それらのコストとリスクのバランスをよく考える必要があります。