国税庁は、2022事務年度(今年6月までの1年間)の法人税及び消費税等の調査状況を公表しました。
主な取組として、消費税還付申告法人、海外取引法人等、無申告法人に対する税務調査が挙げられています。
「消費税還付申告法人」に対する追徴税額は(過去最高の)総額563億円、うち、不正還付が138億円に上りました。
主な不正の手口では、輸出物品販売場制度を悪用することで、国内売上(課税)を輸出売上(免税)に仮装し、約11億円の消費税の追徴税額を課された事例がありました。
こうした制度の悪用を防ぐため、政府・与党は輸出物品販売場制度の見直しを検討する方向です。
具体的には、購入時にいったん消費税を含めた金額を支払い、出国手続きの際に購入した商品を確認したうえで、消費税分を払い戻す方式への切り替えを目指すことにしています。
国税庁では、消費税の不正還付は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性が高い行為であるとして、とくに厳正な調査を実施しています。
「海外取引法人等」の申告漏れ所得は総額2,259億円に上りました。
主な調査事例には、国外関連者に対する取引価格を、独立企業間価格より低く設定し利益移転(約58億円)、国外売上の一部を除外するほか、国外の関連法人へ利益の付け替え(約15億円)、国外関連者への支援目的で貸付金利息及び技術支援料を請求せず利益供与(約4億円)といったものが紹介されています。
国税庁では、増加する輸出入取引や海外投資を行う法人については、課税上の問題点を幅広く把握し、調査を実施しています。
「無申告法人」に対する追徴税額は(過去最高の)総額200億円、うち、不正計算に係る追徴税額が107億円に上りました。
主な不正の手口では、売上代金を代表者名義の預金口座に振り込ませ、書類を破棄することで取引を隠蔽し、約1.5億円の追徴税額を課された事例がありました。
国税庁では、無申告は、申告納税制度の根幹を揺るがすことになるとして、あらゆる角度から情報収集を行い、適正な申告をしていない法人を把握しています。
なお、不正発見割合の高い業種は、飲食、廃棄物処理、中古品小売などが上位にランクされましたが、廃棄物処理と中古品小売は前年は上位10業種に含まれていませんでしたので、これも世相を反映しているのでしょう。