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CRSの活用事例が示す、その効果とは?

 外国の金融機関等を利用した国際的な脱税や租税回避に対処するため、OECDにおいて、非居住者(個人・法人等)の金融口座情報(氏名・住所・口座残高など)を税務当局間で定期的に交換するための国際基準である「共通報告基準(CRS)」が策定されています。

 

 日本も、租税条約等の規定に基づき、各国の税務当局と情報交換しています。

 

 CRSによる非居住者の金融口座情報の自動的情報交換件数は、2021事務年度の受領件数が94カ国から約250万件、提供件数が77カ国へ約65万件に上り、毎年増加しています。

 

 CRSにより、共通フォーマットでデータをやりとりできることからマッチングが容易になり、タックスヘイブンなどにある金融資産(相続財産、滞納者の隠し財産など)が把握されるケースも増加しています。

 

 日本の租税条約のネットワークは約150か国・地域に上り、年々増加しています

 

 OECDが、締結国以外についてリスト化し、プレッシャーをかけることにより、将来的に締結を約束している国・地域も多いといいます。

 

 したがって、現在、締結国でないから金融資産を預けても見つからないだろうとは安心できないでしょう。

 

CRS情報の活用事例

①外国法人から得た役員報酬の申告漏れを把握するとともに、それを原資とした資産運用により得た配当所得が申告漏れとなっていた事例

 

②海外の被相続人名義の預金口座を把握し、その預金口座と、調査で新たに把握した海外の不動産が申告漏れとなっていた事例

 

③法人の代表者が海外に保有している預金口座に多額の残高があることを把握し、受取手数料を海外の個人名義口座で回収することによって収入から除外していた事例 

 

 国税庁では、受領した情報の資産残高の増減等にも着目し、国外送金等調書や国外財産調書などその他の資料情報等と併せて分析を行った上で、海外にある金融資産及びそこから生じる所得や、課税上問題のある海外取引の把握・解明などに活用しています。

 

 とくに富裕層については、多様化・国際化する資産運用から生じる運用益に対して適正に課税するとともに、将来の相続税の適正課税に向けて情報の蓄積を図るなど、調査において重点的に取り組んでいます。

 

 まさに、天網恢恢疎(てんもうかいかいそにしてもらさず)というところでしょうか。