消費税は、現在では所得税や法人税を上回り、租税収入のうち最も金額が大きい税目となっています。
国民の関心も極めて高いことから、適正な申告が期待されます。
税率の引き上げとともに還付申告の件数も増加傾向にある中、還付を不正に受けようとする事案も後を絶ちません。
このため、国税当局では消費税調査を重点事項の一つと位置付けており、今日は公表されている調査事例をいくつかご紹介します。
不正の手口は様々ですが、上の取引図は架空の国内仕入れ及び架空の輸出売上げを計上する事例です。
事業者が国内で商品を取引する際には、消費税が課されますが(課税取引)、国外に商品を販売(輸出)した場合には、消費税が免除されます(免税取引)。
申告計算は次のとおりです。
【売上げに係る消費税】ー【仕入れに係る消費税】=【納付(還付)消費税】
この仕組みを悪用し、国内で仕入れた商品を国外へ輸出したかのように虚偽の申告をして不正に還付金を受けようとしていた事例が把握されています。
次は免税購入物品の国内転売事例です。
免税店においては、一定の外国人旅行者等に対して、商品を輸出する場合と同様に、消費税を免除して販売することができます。
この場合、外国人旅行者等は免税価格で購入した商品を国外に持ち出す必要がありますが、近年、国内事業者(ブローカー)等の指示の下、多量・多額の商品の免税購入を行った上で、国外に持ち出さずに国内転売することで不正に利益を得るなどの事例や、これを免税店が主導し不正還付を行うといった悪質な事例が把握されています。
外国人旅行者等は、免税購入したものを、税務署長の承認を受けずに国内で転売をしてはならないと法律に定められています。
国税当局は、消費税の不正な還付申告を見逃さないために、還付審査や実地調査等を充実させ、専担部署を設置するなど組織を挙げて取り組んでいます。
とくに悪質な不正受還付犯に対しては査察調査を実施し、2022年度は告発件数16件、不正受還付額の合計は約13.5億円に上っています。
今後も、厳正な課税処理や一層の適正な執行に努めていただきたいと期待します。